これから第二の人生を迎える入り口に立つ団塊世代にとって、縁起でもない話...と、怒られる話題かもしれませんが。
人間、誰にも平等にやってくる、最期の時。
自分の親、あるいは配偶者、そしていつの日か訪れる自らの葬儀についてどうするか、現時点でなんらかの考えや方針をお持ちでしょうか?
いったい、葬儀というものはいくら位かかるのか、そしてその費用をどうするか...などについては、考えること自体をつい無意識のうちに避けたり止めたりしているのではないでしょうか。
すこやかに少しでも長生きしたいのは、誰しも同じです。
しかもただでさえ、さまざまな悩みごとに取り囲まれがちな団塊の世代、健康管理や介護の心配ですら手一杯なのに、その後のことまで考えられるか...という心情はよく理解できますし、無理もないことだとも思います。
しかしそうはいっても、多少は事前に勉強しておかなければ、のちのち心情的にも経済的にも大きく後悔する可能性があるのが、この「葬儀」や「戒名」、あるいは「供養」や「墓」に関わることなのです。
なぜならば、死は往々にしてまったく突然に訪れるものですし、身内の不幸に悲嘆にくれている時に冷静で的確な状況判断を行うことなど、誰にとっても難しいことだからです。
現在、日本ではおよそ8割の方が、病院で人生の最期を迎えているそうです。
家族の死に気が動転しているときに、どこからかサッと葬儀業者が現れ、「一切をお世話させていただきます」との言葉のまま、言われるままに盛大な葬儀を執り行った。
なんとか故人のおみおくりも済ませた...そのあとで悲しみ冷めやらぬまま一息ついていると、自宅に送られてきたのは、葬儀業者からのビックリするくらいの高額な請求書(!)。
などというケースも、現実にはよくあるところです。
特に病院に指定葬儀業者として入り込んでいる業者などは、ふだんからなにかと営業経費もかけていることもあり、イザ葬儀となった場合にその実費と業者利益のプラスアルファを回収すべく、葬儀費用を上乗せしたりもするようですね。
もともと葬儀費用なるものは、感覚的な世間相場こそあるにせよ、いわゆる「適正市場価格」「定価」が存在しない世界です。
特に用心したいのは、「葬儀一式 50万円プラン」などと銘打って、いかにも「50万円を支払えばすべて込みで葬儀が行われ、それ以上はお金がかからない」かのように印象づけるアプローチです。
実はこの場合の「葬儀一式」というのは、あくまで「葬儀の儀式そのものに費やされる費用」と業界では認識されているとのこと。
それ以外の火葬料や飲食費、遺影写真代や霊柩車の搬送費用などは、別にかかる実費・オプション料金として、追加請求されるケースが多いのです。
ですから、本来ならば葬儀プランの提示を受けた段階で、「この一式プラン料金には、どのサービスがどこまで含まれるのか?」を細かく詰めたり、あるいは2~3の業者に相見積もりをとって比較したりすべきなのですが、ふだんから多少なりともこういったことに関心を払っていないと、いざその事態に直面したときは気が動転して、とても上手に対処できるものではありません。
それでも、葬儀サービスが高額な費用にみあった素晴らしいものであるならばまだあきらめもつくかもしれませんが、手抜きで適当に行われてしまった場合などは、なんだか故人に申し訳がたたないような気持ちにもなり、のちのちまで後悔を引きずったりして、精神衛生上も良くないものです。
あまり知られていないのですが、「墓地・埋葬等に関する法律」という法律があります。
法律的には「死亡してから24時間経過しないと火葬できない」「埋葬するならば墓地以外の区域では行わないこと」「火葬は、火葬場以外では行わないこと」といったことが、定められているだけです。
墓地・埋葬等に関する法律
つまり、「葬儀は必ず執り行わなければならない」「葬儀のやり方はこうでなくてはならない」といったことについての法的な取り決めは、どこにもないのです。
最近は、火葬のみ行って、葬式を行わないケースも増えてきているようです。
また、「散骨(埋めずに撒く)」は以前は禁じられていたものの、法務省の見解が出てすでに法に触れないものと判断されており、今日では、海や山に遺骨を撒かれる遺族も珍しくなくなってきました。
墓地として許可された場所に墓の代わりに花木を植える「樹木葬」も、近年とみに注目されてきています。
家族や親族、生前の親しい友人までを集めて行う「密葬」や、家族だけで行う「家族葬」、あるいは型にはまった儀式的なことを行わずに故人を偲ぶ「無宗教葬」なども、徐々に増えてきています。
このような葬儀スタイルの多様化につれ、葬儀にかかる費用もまた、当然ながら大きく異なってきます。
もちろん人生の最期に関わる問題は、金銭面だけではかられるべきではないのでしょう。
しかし、葬儀費用の全国平均は236万円(日本消費者協会 平成15年調査)というデータもあり、いざその時がきたら考えればよい...というほど経済的に軽い話では無いことも、また確かです。
これもまた、団塊世代が頭の片隅に置いておきたい、人生の一大テーマですね。
※参考リンク
・現代葬送キーワード解説 (SOGI 表現文化社)