まだ1,400兆円程度あるともいわれる、日本の個人金融資産。
その半分強は現預金であり、その現預金の8割を握っているのが50歳代以上と推計されています。
定年退職を迎え退職金を手にした団塊の世代、この層に晴れて仲間入りをする方もまた、多いことでしょう。
団塊世代は、年金制度においても「最後の逃げ切り世代」とヤユ?されています。
そもそも年金制度は現役世代の払う保険料を原資として、その時々に支払う年金で受給者を支える「世代間扶養」という考え方で成り立っています。
公的年金制度の役割(日本年金機構)
支給開始年齢こそ65歳以上に引き上げられたものの、団塊ジュニア以降の受け取るリターンに比べてまだまだ有利であることは確かです。
厚生労働省のモデルを使った試算によれば、「40年間サラリーマンを勤め上げた夫と専業主婦の妻」というモデル家庭が受け取る厚生年金(基礎年金を含む)において、本人が収めた保険料の何倍を年金として受け取れるか、という試算が提示されています。
これによると、団塊の世代に近い1945年生まれ(2005年で60歳)が受け取れる年金給付額が、「保険料負担額の3.8~4.6倍」となっているのに対して、2005年で成人した1985年生まれが受け取れるのは収めた「保険料の2.3倍」に過ぎません(ま、モデル家庭の設定の仕方に問題があるとか、元金が2倍以上になるならそれでもすごい...といった見方もできますが)。
年金制度における世代間の給付と負担の関係について (厚生労働省「年金財政ホームページ」)
※ちなみに自分の受取年金額がいくら位かを試算してみたい場合は、以下をご参照下さい:
年金見込額試算について(日本年金機構)
しかしマーケティングを仕掛ける側の期待に反して、団塊世代が会社勤めから解放され、旅行に美食にと、自分と家庭の楽しみのため積極的にお金を使っていく...という流れなどは、そう一朝一夕に出来そうにはありません。
過去に電通が実施した「団塊世代の退職金に関する意識調査」(2007年)によれば、団塊世代の退職金使い道として「預貯金・資産運用」が5割、ローン返済が2割を占めたとのことです。
また団塊世代の特徴として、団塊・ひとかたまりというネーミングのイメージとはうらはらに、その生活スタイル・経済状態・家族構成・健康状態・嗜好や趣味などが細分化され、方向感もバラバラになっている点があげられます。
団塊の世代の意識(内閣府)
平成24年度「団塊の世代の意識に関する調査結果」(概要版)【PDF】(内閣府 共生社会政策)
あえて言うなら、「固定的な特徴がないこと」が団塊世代の特徴でしょうか。
つねに夫婦単位で動き、何ごとも夫婦で相談して決めるという家庭もあれば、「おひとりさま」という言葉で代表されるように、一人あるいは友達といっしょに活発に動き回る人も少なくありません。
65歳以上で介護を受けている人の割合は全体の2割に満たないといわれますが、心身とも元気で好奇心旺盛、インターネットを使いこなす人もいる一方で、退職後の地域社会へのとけ込み方がわからずに自宅に引きこもりがちの生活になったり、あるいは目が疲れるからとパソコンを毛嫌いしてさわらない人もいます。
また昨今は、不幸にしてリストラや親の介護などで中途退職を余儀なくされ、退職金どころか日々生活していくのが精一杯...という団塊世代も数が増えてきているようです。
生活保護を受けている世帯はいまや100万世帯を超えるまでになりましたが、実にその5割近くは高齢者世帯です。
国内の完全失業率が4%前後の現在、団塊世代の再就職事情も厳しく、消費もレジャーどころか生活周りで手一杯...というところも多いでしょう。
このように団塊世代にマーケティングを仕掛けていきたくとも、その共通項となる特徴や傾向をつかむことが難しいというのが、マーケティング関係者の共通認識のようです。
そこに最近の経済環境の悪化も加わって、たとえば高額の世界一周ツアーなど、単発で盛り上がっているヒット商品は随所に見られるものの、なかなか市場全体としては当初予想したほどの盛り上がりをみせていないのが現状のようです。