日本での年金暮らしは、金額が少なすぎてキツすぎる、経済的にとてもやってはいられない...ということで、物価の安い海外への移住生活を検討する方も少なくありません。
国内における老後の経済的不安を増す材料が事欠かない昨今、余生の長い団塊世代にとって、海外暮らしは一度は考えたいテーマなのかもしれませんね。
日本の年金は海外で受け取ることができ、租税条約が結ばれている国であれば課税はその国で行われ、日本で課税されることはありません。
したがって、平均生活費が安く、年金額との差額が生じる国に住んで余裕のある生活をしながら、あわよくば貯金もしたい...というもくろみも出てくるわけですが、移住してから数年経ってその国が強いインフレにでも襲われた場合、当てにしていた差額分の金額程度は、簡単に吹き飛ぶリスクがあります。
また、単なる海外移住でなく、将来的な介護の問題も考え合わせ、海外に「終の棲家」を求めるケースもあります。
フィリピンなどに早い段階から移住し、将来はそのまま現地で親に介護を受けさせたい、あるいは自分自身の介護を受けたい...など、かなり長期の視点で考える方もいるようです。
介護の問題を考えに入れる場合は、現地で安心して余生を過ごせる施設をどうやって見つけ出すのか。
また、日本語環境がない中で介護生活で生じる細かなコミュニケーションの問題をどうするのか、さらには環境や習慣、言語が異なる地域で暮らすことによるストレスの問題など、話はさらに複雑かつ大変になるはずです。
相当に長い年月をかけ、為替変動や現地の治安・医療施設の状況や急病時の医療費の問題など、将来的に起こりうるリスクを十分に掘り出す必要があります。
さらに現地に何度も出向くなどの下調べもして、最後の最後にようやく決断するくらいの慎重さがないと、失敗に終わるリスクも高いのではないでしょうか。
国内ですら、定年退職後にかねてからあこがれていた田舎暮らしをはじめてみたものの、気候はあわないし生活は不便だし、知人もなく現地の人もそっけないしでこんなはずじゃなかった...と後悔する団塊世代も、少なからずいるのが現実です。
まして海外となると、検討対象となる国・地域も数が増えますし、候補地が都会か田舎かで状況もまったく異なってきます。
しっかり事前準備をしないと、経済的にも心情的にも、強い失望感を味わうことになりかねません。
特に見落としがちなのが、本人の心・内面が、はじめての地域での海外暮らしで時間がたつにつれてどう変わってくるのか...ということです。
配偶者や友人が近くにいるにせよ、新しい地域で最初感じた新鮮な気持ちや好奇心というものは、時間が過ぎるにつれだんだんと薄れてくるものです。
そして、まわりに日本語のざわめきや日本的な風景がないことのさびしさが心の内に徐々に積もり、ストレスとなってある日吹き出す...といったことさえ、決して珍しくはないのです。
また、こういった現地情報に疎い日本人移住者の心のすきま風につけこみ、詐欺的な投資話を持ちかけたりする現地の日本人がいるケースもあるなど、なかなか油断がなりません。
もちろん個人差のある話ですし、十分な計画をたてて海外移住を成功させている事例も少なくないことも、また確かです。
「事前の十分な調査と準備、シミュレーションを行ったうえでの決断かどうか」が、肝要ですね。
まずはロングステイ(長期滞在)を試してみたい、という方もいると思われます。
参考サイトを二つ、掲載しておきます。
海外移住情報
財団法人 ロングステイ財団
他人の参考例や専門企業のプレゼンテーションなども、もちろん参考にはするべきですが、あくまで「自分の場合はどうだろうか」という視点で、周りに流されない心を持った最終決断をしたいものですね。