団塊世代は退職後、約4.5~9万時間の「残り時間」の使い方を考える必要があるわけですが(退職後の残り時間に照らして模索する、団塊世代の生き方とは。)、「いかにして金銭的コストを抑えながら、充実感に満ちた日々を送るか」のハウツーは、定年間近の諸氏にとっての一大テーマといったところでしょう。
その有効な解決策の一つが「公共図書館で本を読みながら時を過ごす」ことなのは、データ的にも裏づけられています。
雑誌・書籍の販売額合計が1997~98年頃から減少の一途をたどっているのに対し、全国の公共図書館の数は1996年の約 2,400から、2010年の約 3,200へと1.3倍に増加しています。
もちろん図書館の数が増えるに従い、個人貸出冊数も右肩上がりに増えている状況で、余暇を図書館で過ごす高齢者、特に50~60代の団塊世代の利用増が背景にあることは疑いありません。
文部科学省も2010年の関連調査において、「団塊世代の大量退職が始まり、空いた時間に本を読んで過ごす人の増加」が公共図書館の貸出冊数増の一因と指摘しています。
図書館の歴史と現状 公共図書館数と個人貸出冊数の推移(日本著者販促センター)
老眼や視力の弱い方のために文字を大きくした「大活字本」を置いたり、団塊世代の関心が高そうな分野の本を集めた「シニア支援コーナー」を設ける公立図書館も出てきています。
【中央図書館】シニア向けコーナーを新設しました(葛飾区)
もちろん同じ団塊世代でも、これまで読書習慣のあった人と無かった人では図書館の利用頻度は異なるでしょうし、「読書は目が疲れるからイヤだ」という人もいるでしょう。
その一方、電子書籍が普及しつつある昨今であっても、わざわざ図書館まで出向いて書架から自分の好みの本を探すことそのこと自体に、楽しみを見出す人もまた多いことでしょう。
業務関連なり、あるいは長年の趣味として特定の分野を深く掘り下げていた方は、その分野の「専門図書館」を探し出してそこに入り浸るのも、退職後の時間の使い方としては悪くなさそうです。
図書館リンク集(日本図書館協会)
全国の図書館 専門図書館リスト(カーリル)
図書館では新刊の競争率が高く、大抵は少ない入荷冊数を奪い合うように「貸出中」が続くことが常ですが、今日ではご存知のとおり、ある程度大型の書店ではじっくり読んで検討できるように、店内に椅子が置かれていますね。
よく観察すると、ほぼ毎日かなりの長時間書店で腰を落ち着ける新刊チェッカーと化している「常連さん」もいるようです。
となると、今後は古典や歴史書・文学全集など腰を据えて読書に耽けるときは図書館で、そして月に2~3回の新刊チェックは本屋さんで、という感じに使い分けるのが良いかもしれませんね。
最近は「お会計前の」新刊であっても店内に併設されたカフェに持ち込め、飲んだり食べたりしながら読書を楽しめる新業態「ブックカフェ」を、生き残りをかけて展開する大型書店も目立ってきました。
コーヒー代は最低限必要になりますが、それでも単行本や専門書の新刊価格の高さを考えるなら、フトコロの厳しい退職後の団塊世代にとっては有難い展開です。
うっかり本にコーヒーをこぼさぬよう気を使わなくてはならないのが玉にキズですが(ちなみに万一こぼしてしまった時に買取義務が生じるか否かは、ブックカフェによっても対応が異なるのが現状のようです)。
東京ブックカフェ20選(タイムアウト東京)
公共図書館であろうとブックカフェであろうと、いずれにせよ「退職後の暇つぶし場所」とネガティブには捉えたくないものですね。
自らの探究心・好奇心を満たしてくれる知的な刺激を得られる場所、そして定年退職後の新たな生きがいのきっかけを提供してくれる場所。
教養を深めるのも良し、退職後の再就職・起業に向けた専門知識や実利的・実用的知識を仕込むのもまた良し。
退職後は読書を「日々の友」、そして図書館や書店をその友と出会う「行きつけの居場所」とすることは、すべての団塊世代にとって真剣に考える価値のあるテーマではないでしょうか。